倉田悠子 『くりいむレモン II 亜美の十字架』 (河出書房新社)

くりいむレモン2 亜美の十字架

くりいむレモン2 亜美の十字架

呼びかけてみる。
お兄ちゃん、亜美はここにいるよ、もっと亜美を見て。そんなにのんきにしていたら、亜美、どっかに行っちゃうよ。

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兄・宏の留学の前にその想いを遂げた亜美.しかし,会えない日々にますますその想いは募るばかり.不安と不満に心は大きく揺れ動く.
兄と妹の禁断の恋.脚本家みずからの手による「くりいむレモン」ノベライズ完結編.一巻に引き続きめっちゃ古いなー.写真のモデルに欠員が出たから代わりに手伝ってほしいと頼まれ,仕方なくついていったら案の定,とか.ふた昔ほど前の黄金パターンを強烈に迷いなく踏襲している印象.その一方,小道具として扱われるケータイ,メール,9・11 後のニューヨークの存在が浮きまくること甚だしい.まあしかしストーリーにもテキストにもまったくブレがないのは評価していいのかもしれない.無理せず 80 年代の話にしといたほうが良かったんじゃないかという気はしたけど,それじゃ面白くないしな.変なもの読んだなあ,という微妙な充実感は確かにありました.