- 作者: 飴村行
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2009/08/22
- メディア: 文庫
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「だからぼっちゃん、大船に乗ったつもりで安心して下せぇ」
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「大船? おめぇがか?」
「へい、タイタニック号にでも乗ったつもりで安心して下せぇ」
「あの船沈んだじゃねぇかっ!」
国民学校初等科に通う真樹夫と大吉は,町の総合病院の院長の息子雪麻呂から自宅に招待される.雪麻呂の家では使用人として,蜥蜴のような頭部を持った爬虫人こと〈ヘルビノ〉の富蔵を雇っていた.
『粘膜人間』と共通した世界で描かれる,粘膜シリーズ第二弾.一作目はいまひとつピンと来なかった私だけどこちらはすごく面白かった.言葉を駆使して描かれるいびつな昭和の風景,死体損壊,東南アジアのジャングルに潜む人食いミミズ,ヘルビノたちの村…….言葉のセンスとリーダビリティのムチャクチャに高いテキストで,グロテスクな情景の数々もすごく楽しい.緩急ありつつどこか一貫性の欠けたストーリーも,作りこまれた不条理な世界観においてはむしろ正しかった.不条理な民話を下敷きにした(とどこかで読んだ)ストーリーであることがわりかし分かりやすいからかな.まあ自分が民話の色んなエッセンスを読み逃してる可能性はまったく否定できないけれど.
雪麻呂と富蔵の主従関係は上に引用したような感じで,終始ユーモアを失わずしっかりした信頼関係が窺える.富蔵萌えのひとが出るのもうなずける.……それだけにラストで(ムチャクチャさらりと)明かされる忠誠の理由に肝を抜かれたわけですが.
三作目の『粘膜兄弟』ももうすぐ発売.楽しみに待ちたいと思います.