六塚光 『スキュラ・ダークリー』 (一迅社文庫)

スキュラ・ダークリー (一迅社文庫)

スキュラ・ダークリー (一迅社文庫)

「突然何を言い出すんです。こんな重要な話し合いの最中に寝言ですか?」
「寝てねえよ。目を開けたまま眠る奴がどこにいる」
「意外といますよ。私も小さい頃は時々白目を剥いたままで眠っていたそうです。親からさんざん不気味がられたものですよ」
「それはたしかに不気味だ」

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日本共和国の南安谷島にある,安谷共和国学院海洋学部海獣の生体を研究していた学生,青島が殺される事件が発生した.島の守備隊長である鹿苑寺麗華は,海洋学部の転入生である愛梨と清十郎のコンビに捜査の協力を要請する.
ポールシフトによる大規模地殻変動から,無数の小群島と三つの勢力に分裂した日本諸島.人間たちは,吸血鬼と協力して海から襲い来る海獣たちと戦っている.『Le;0 -灰とリヴァイアサン-』(一巻感想)(二巻感想)と同じ世界を舞台にした,別の場所での話.ストーリーはミステリ仕立て.誰が/どうやって/なぜ青島を殺したのか.「スキュラ」と呼ばれる集団の正体は.島に隠れ住むと噂される「西森カーミラ」は本当に存在するのか.などなど.
端々にユーモアを乗せたテキストは相変わらず読んでいて楽しい.吸血鬼とパートナーである清十郎と愛梨の信頼関係の見せ方も,厭味にならない程度の自然なテキストで,それでいて十分に伝わってくる感じが良い.「リヴァイアサン」とコンビは変われど,良い意味で変わっていない部分.
ってことで楽しませていただきました.あとがき読んだ限りでは,「スキュラ」と「リヴァイアサン」が並行なりクロスオーバーなりしていくことになるのかな.それにしても「スキュラ」の正体には,今後の展開を大きく引っ張っていきそうな大ネタをあっさり出した感じだったのもあって,二重にびっくりした.これで話がどう転がっていくか.一層楽しみにしております.あと,表紙を一枚めくったカラーイラストの麗華お嬢さまが丸っこくてかわいいですと追記しときます.