ウィリアム・ギブスン&ブルース・スターリング/黒丸尚訳 『ディファレンス・エンジン』 (ハヤカワ文庫SF)

ディファレンス・エンジン〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

ディファレンス・エンジン〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

ディファレンス・エンジン〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

ディファレンス・エンジン〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

じゃあ、レイディ・エイダ・バイロンのこと、聞いたことがないのか……。総理大臣のお嬢さんで、“機関エンジンの女王”その人のこと」
シビルから手を放すと、上衣の前をはだけるように両腕を大きく広げ、見世物師の仕草になって、
「エイダ・バイロンバベッジ卿の親友にして愛弟子。チャールズ・バベッジ卿こそ、差分機関ディファレンス・エンジンの父にして、我らの時代のニュートンにあたる」

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チャールズ・バベッジの発明したディファレンス・エンジンを中心とし,産業革命期のロンドンでは蒸気機関が異様なまでの隆盛をきわめていた.
サイバーパンクの旗手ふたりの手による,もうひとつのありえた歴史を描くスチームパンク.無数の歯車とパンチ・カードからなる蒸気コンピュータ.汚れきったロンドンの街,悪臭を放つテムズ川.考古学の流行.国際的陰謀に巻き込まれる革命家の娘,古生物学者,ジャーナリスト,刑事…….改変された異様で歪なロンドン像は非常に興味深い.しかし,物語を構成する個々のパーツは面白かったのだけど,話を掴みながら読むのに思いのほか骨が折れた.「改変」そのものと,「改変」されたことで発生する物語を存分に楽しむには,ちと私の教養が足りなかった気がする.ガジェットを楽しむぶんには十分だったと思うんだけど,よりきちんと楽しむためには,という意味でね.