パトリシア・ギアリー/谷垣暁美訳 『ストレンジ・トイズ』 (河出書房新社)

ストレンジ・トイズ (ストレンジ・フィクション)

ストレンジ・トイズ (ストレンジ・フィクション)

それから、事態の重みがずしんと来た。嘘をついた。生まれて初めて。
おもしろい。ベッドの上にあぐらをかいて、わたしは思った。嘘をついた。でも、わたしは生きてるし、誰も気にしてない。愉快、愉快!

Amazon CAPTCHA

フィリップ・K・ディック賞受賞の幻想小説.三姉妹の末娘ペットの目から描かれる,賑々しくていかがわしいロード・ノベル.三部構成で,部ごとにそれぞれ違う時期のペットが語り手となっている.なんというか,幻想に紛らせつつの一風変わった成長物語のようでもあった.幻想に隣接する手段が歳とともに変わっていくのが象徴的.子どもの頃は道路沿いの見世物小屋,ティーンになってからはドラッグやアルコール(?).一家の厄介者だった長女ディーンとの向き合い方も,魔法の書やヴードゥーのまじないアクセサリーを介したものからシフトしていく.単純に,幻想を愛でる,というわけにはいかず読むのに骨が折れた.面白かったのは間違いないのだけど,書いてあることをちゃんと理解できた気はぜんぜんしないぞ.