折口良乃 『死想図書館のリヴル・ブランシェ』 (電撃文庫)

死想図書館のリヴル・ブランシェ (電撃文庫)

死想図書館のリヴル・ブランシェ (電撃文庫)

「リヴル、準備はいいな」
「イエス、マイライター。溢れる想像により、無二の幻想を創造してください」

Amazon CAPTCHA

死想図書館とは,焚書・禁書や架空の本のみが保管され,普通の人間には入ることのできない図書館.夢のなかで死想図書館へたどり着いた高校生黒間イツキは,館の主エレシュキガルより幻想を実体化させる『真白き本』と司書リヴルを与えられ,逃げた死書の封印を命ぜられる.
主人公の語りが,ハルヒにおけるキョンのそれに似ているのがポイントかな.地の文と会話文がカギカッコなしのシームレスで,場所によってはどっちがどっちか区別がつかない.どこまで狙ってやっているのかがいまいち見えないのだけど,これが「信頼できない語り手」に近い効果を生んでいた.悲劇的な結末を用意しながらあっさりひっくり返すという『九罰の悪魔召喚術』と同様の手法も,おかげで気持ち悪さと胡散臭さをもうひとつ重ねた感じになっていた.物語のパーツ自体には特に新しいものはなかった,と思う.今回は作品のルール説明のためのプロローグだったのだけど,書いたものを想像力によって実体化することが可能,ただし索引に存在しない幻想は(そのままでは)実体化できない,というあたりが今後のキモだろうなあ.