森晶麿 『奥ノ細道・オブ・ザ・デッド』 (スマッシュ文庫)

奥ノ細道・オブ・ザ・デッド (スマッシュ文庫)

奥ノ細道・オブ・ザ・デッド (スマッシュ文庫)

無駄に終わる宣言。不毛な旅はまだまだ続きそうだ。
十二、三匹屍僕を斬り倒して歩くうち、白河の関に着いた。
「この関は風雅だなぁ」
せんせぇ、ご満悦。

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時は元禄,犬公方綱吉の治世.江戸はおどろ歩く屍僕たちの街となっていた.伊達藩に送った幕府の家臣が屍僕となって戻ってきたのが,この衰退と荒廃のはじまりであったという.綱吉の側用人柳沢吉保は,芭蕉に伊達藩へ赴き原因の調査を命じる.
あらゆる生き物が屍僕(ゾンビ)と化した奥の細道を,変態イケメン芭蕉と,なんやかんやとコスプレばかりしている曾良の変テココンビが往く.奥の細道×ゾンビの「元禄パンク」.テキストがすごく洒落ているのが真っ先に目に付く.じゃっかん言葉が足りない気もするのだけど,ちょっと記憶にない独特の読み口が味わえた.
衣装を変えると性格まで変わる曾良キュンにキュンキュンしたり,蟹ゾンビの大群にゾワゾワしたりと,起きる出来事はなんとも馬鹿馬鹿しくてこれまた楽しい.屍僕騒動の黒幕たる〈しもべ〉に迫っていく後半に入るとちょっと失速した感があるかなー.ラストはまとまっているのかまとまっていないのか正直よく分からないのだけど,やー,当初の期待以上に変な話だった.変なゾンビ小説という意味では『高慢と偏見とゾンビ』とじゅうぶんタメを張る(「奥ノ〜」はマッシュアップ小説とは違うけど).こうなると第一回アガサ・クリスティー賞受賞作もがぜん楽しみになってくる.たいへん満足でありました.