ジャック・ケルアック&ウィリアム・バロウズ/山形浩生訳 『そしてカバたちはタンクで茹で死に』 (河出書房新社)

バーテンはラジオをかけていた。ニュース番組のアナウンサーがサーカスで火事が起きたと言っていて、そいつが「そしてカバたちはタンクの中で茹で死にしました」と言うのが聞こえた。かれはそういう詳細を、ラジオアナウンサー特有のなめらかな調子で語った。
フィリップはバーバラに向き直り、「バブシー、茹でカバ食いに行かない?」と言った。
バーバラは「それ、おもしろくないと思う」と言った。

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実在の殺人事件をモチーフに,ジャック・ケルアックウィリアム・バロウズのふたりが,ふたりの人物を交互に描いてゆく.本国でも 60 年以上刊行されていなかった「幻の共作」.一週間の出来事を装飾もなく,淡々と書き継いでいるだけという感じ.ふたりの名前を知っていれば楽しめる,というものでもおそらくない.訳者もあとがきで認めているように,小説として読んで面白いものではないかなあ.