小林めぐみ 『地球保護区』 (ハヤカワ文庫JA)

地球保護区 (ハヤカワ文庫JA)

地球保護区 (ハヤカワ文庫JA)

彼にはおよそ千人、正確に言うなら九百七十七人の同じ遺伝子を持つ兄弟がいた。彼らはたった一人の天才のクローンであり、皆、非凡なる才能を持って生まれ、オリジナルのあとを継いで研究者としての役割をきちんと果たした。
しかし、百年も経てばそろそろ「変化球」がほしくなるものだ。研究所は「天才」そのものを研究したくなったらしく、遺伝子に手を加えた。結果、生まれた「落ちこぼれ」がシウだった。

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四百年前,一度滅びた地球は,自浄を終えて回復の途中にあった.人類が退去して数百年後の現在,封鎖されていた地球に勝手に入植している地球系人は「新地球人」と呼ばれ,地球保護委員会から脆弱な環境を脅かすものとして問題視されていた.
復活する地球を中心に,地球系人たち・新地球人たち,科学者,政治家,それぞれの立場からエゴがぶつかる.何度も繰り返すごたごたの末,最終的に導かれる結論はかなり身も蓋もないもの.確かに正論かもしれないんだけど,もうちと別の書き方があったのではないかという気が私はしてしまう.読み取り方とか,個人の好みとか信条とかによるところが大きいのかなあ.