會川昇/原案・坂口安吾 『UN-GO 因果論』 (ハヤカワ文庫JA)

UN?GO 因果論 (ハヤカワ文庫JA)

UN?GO 因果論 (ハヤカワ文庫JA)

足の爪先から頭の先まで、強烈な熱さが突き抜けていく。子どもの頃、ストーブや薬缶に手を伸ばし、指先に感じたギリギリの熱さ。触れてしまえば火傷をすると子どもでもわかっているが、手を伸ばしてしまう痛みと甘さのあいまった欲望。いけないことをした、という快楽。波川をいま貫いているのは、絶対にあけてはいけなかった最後の扉を開放してしまったという罪の意識と、しかしそれをすることによって得られた解放感なのだろう。
身体の中でギリギリまで耐えていたものが、言葉と共に一気に口から迸った。

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敗戦から間もない近未来.I 国の日本人街に住む[探偵]のもとに,日本人船長から依頼が舞い込む.
劇場公開アニメ「UN-GO Episode:0 因果論」の,脚本家自身によるノベライズ「因果論」と,さらにその前日譚となる「日本人街の殺人」の二本立て.原作の知識ゼロで読みはじめたのだけど,どこかエキゾチックな雰囲気を漂わす近未来の描写にから始まる物語に魅了されてすっと入っていけた.SF ミステリとして非常にしっかりまとまっており,まさに映画一本を観たような気持ちになれる.原作を知っていればおそらくより楽しめるだろうと思うのだけど,これ一冊でも十分に楽しめました.
以下余談.偶然だと思うのだけど,最近読んだばっかの『武装中学生2045 -夏-』と符合するところが多かったのでメモ.紛争地帯での海外NPONGO)の悲劇が物語の引き金になっているところ.それがきっかけで自衛隊や防衛のあり方が変化しているところ.いずれも軍隊ではなくあくまでも「自衛隊」であるとしているところ.どちらも原作のある作品であるところとか.気になったひとは読み比べてみるのもいいかもしれない.