岡本タクヤ 『武装中学生2045 -夏-』 (ファミ通文庫)

武装中学生2045-夏- (ファミ通文庫)

武装中学生2045-夏- (ファミ通文庫)

「大人は若者に失望し、若者は大人に絶望する。この百年はその繰り返しだった。とりわけ二十一世紀に入ってからはそれは顕著だ」
「そう……でしょうか」
「──まァ、それは俺が生きた時代だからということもあろう。だが、ならば大人に絶望していた若者たちは、自分たちの下の世代の若者たちから尊敬を受けるに足る大人になれたというのか。経済の低迷? 政治の腐敗? 何十年そんなことを言い続けている。それを聞いて育った子供たちが大人になって何をした? 結局は上の世代の悪弊を真似てきただけだ。いつになったら、この国を救う素晴らしい大人たちは現れる。いつになったら、そんな大人に育つ子供は産まれてくるのだ。我々はただ、終わりのない螺旋階段を下り続けているだけではないのか」

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「右手に不戦の誓いを。左手に銃を。」.2022 年,「国防教育法」の施行により,国家を護る次代の世代を育てる「防衛学院」が日本各地に設立される.防衛学院に通う生徒たちは,遠巻きから様々な感情を込めて「武装中学生」と呼ばれていた.時は流れて 2045 年夏.防衛学院の生徒 4 名は,沖縄までひとりの少女を迎えに行く任務を与えられる.
2045 年の日本の,終戦 100 年を迎えようとする沖縄を舞台に「戦争」を語る.グローバリゼーションが行き渡った世界における戦争の意義,兵士と兵器,少年兵の役割の変化,そんな世界における日本人の戦争観の変化.バチガルピなどとはまた別の意味での,行き場のない世界の閉塞感を,やり過ぎない程度に慎重に,かつ真摯に扱っていると思う.
ちょっと惜しかったのが,世界観とストーリーの間で,リアリティのレベルがだいぶ離れていたこと.世界観やテキストは素晴らしいし,クライマックスは唐突に感じたけどアイデア自体は悪くないと思うので,見せ方なのかなあ.
ということで,新人賞デビュー作『千の剣の舞う空に』以来,ずっと待ちわびていた約四年ぶりの新作でした.いろいろしがらみがあって簡単ではないのかもしれないけど,もっといろいろ書いてくれると嬉しいなあ,と思ってます.