朱川湊人・笹公人 『遊星ハグルマ装置』 (日本経済新聞出版社)

人間が星に願いをかける……ってのは、よく聞く話だけど、その星の中のいくつかが地球に願いをかけているなんて、人間は夢にも思わないだろう。誰でもない、今、この瞬間に生きているあんたに幸せになってほしいと願っているなんて──本当に思いもよるまいよ。

大銀河三秒戦争

海辺にてオカリナを吹く少年が永遠に童貞でありますように

U市にはもう帰らないから

笹公人の短歌と朱川湊人の掌編がサンドイッチのように交互に織り込まれた,変な作品集.同じ「惑星」からインスピレーションを受けたという,昭和の雰囲気を漂わすノスタルジックな雰囲気は共通していると思うのだけど,どこかボンクラめいたところもまた共通している.幻想的な話あり,ほろりとさせる話あり,バカ話ありと幅広い作品を揃えた朱川湊人と,一貫した雰囲気を持つ笹公人,ということでバランスは取れている,のかな? 全体を貫くテーマはあんまないというか,読んで何かが残るような本ではない気もするのだけど,良い意味で味のある変な作品集になっている.