- 作者: 倉数茂
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/04
- メディア: 単行本
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そのくだりまで話す必要はなかった。エレクの腕の中で、ネメはいつのまにか寝息を立てていた。エレクは深いため息をついた。もちろんあれは〈男〉だった。これまで物語のなかでしか耳にしたことがなく、自分たちとはまったく異なる種族の一員だった。残酷で野蛮な種族。始まりの母の国の災い。
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「始まりの母」から生まれた「母」たちと「娘」たちからなる独自の社会を形成する,女たちだけが暮らす島があった.この島に漂着したひとりの男を,漁の手伝いから帰ろうとした娘エレクがこっそり連れ帰るところから物語が始まる.
ファンタジー,と言っていいのかな.「始まりの母」を敬慕する母と娘だけの国(はっきりと説明されないのだけど,どうやら単性生殖をしているらしい)を侵攻するのは,神を信仰し「父」に強烈に縛られた男たちだった.構図やストーリーは分かりやすいと思う.しかしあまり突き詰めた描き方をしていないのは意図的なものなのかな.女だけの社会や,男社会との対立,父性・母性の差異など,突っつけそうなところをひと通り触れてはいるのだけど,そのいずれもさらっと触れる程度.そのため,雰囲気だけの比較的地味な小説に見える.何か見落としてるのかなーという気もするのだけども,いまひとつ良さが分からなかった.