川崎康宏 『モノクロス Broken soul, Angel wing』 (ファミ通文庫)

彼らがテーブルに着くと軍服の給仕はそれぞれにメニューを手渡した。
開いてみると、上の方にはコースメニューが並んでいた。アミン大統領コース、ヴラド・ツェペシ四世コース、日本帝国陸軍コース、バートリー伯爵夫人コース。

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アンチキリストを標榜し,世に悪徳を説く悪魔教団が根付いた街,ローブルシティ.依頼を受けて教団のサバトに殴りこみをかけた殺し屋,デビー・ブロンコは,撃っても撃っても死なない不死身の司祭に襲われそうになるが,金の十字架とトゥームストーンのロゴを背負ったロングコートの男に救われる.
酸性雨とセックスで退廃した街に現れた神の使いは銃を手にしていた.カバーに曰く「ネオ・ノワール・アクション」.舞台となる「街」の緻密……とまではいかないけど,とにかく描写が面白い.ph6 の酸性雨が降り注ぎ,酒場では過激なセックスショー,極めつけは人肉食レストラン(店内いたるところが超精巧な死体のオブジェで埋め尽くされたり,メニューが引用部のようになっていたりする普通のレストラン,らしい.ロボットレストランの先取りであろう).ごちゃごちゃしていてでもあまり広くないであろうひとつの街を,しっかりとイメージさせてくれるのよな.それぞれどこか間抜けなところのある悪役たちも楽しい.なるほどこれがこなれてくると『ありすとBOBO』(一巻感想二巻感想)みたいな作品になるんだなあ,と納得して読んだ次第.