山川進 『温泉ドラゴン王国 1 〜ユの国よいとこ、一度はおいで〜』 (オーバーラップ文庫)

「これは魔法なのか?」
「いいえ、魔法ではありません。古の湯人は温泉の奇跡をこう呼びました。……『効能』と!」
「効能!!」
「魔法」ならぬ「効能」を目の当たりにして、僕の心は興奮に打ち震える。

温泉ドラゴン王国 1 ~ユの国よいとこ、一度はおいで~ (オーバーラップ文庫) | 山川 進, 児玉 酉 |本 | 通販 | Amazon

大陸の東端にある小国,ユ王国.山ばかりで貧乏ながら,平和でのんきな暮らしをしていた国の王子アリマは,隣の帝国から来た少女ハナに出会う.ハナはユの国に大量にある「火山のマグマで温められた地下水」を調査しに来たという.
剣とドラゴンのファンタジー世界の温泉話.豊富な湯を利用した露天風呂に日々浸かっていながら,「温泉」という概念を知らなかったユ王国に,帝国から「温泉」調査の人間が訪れる.車輪の再発明ならぬ「温泉の再発見」というのかな.まあ,引用部分にあるように,ただの温泉ではないのだけど.まったりしんみりと,よくできたファンタジーだと思うのだけど,終盤の展開はわりと不満があった.戦争の道具にもなりうる温泉を守るという名目で,実際に温泉を戦争の道具にしてしまう,というのはまったくスマートではないと思うのよな.そこに気づいていないとは思いにくいんだけど,「戦争の道具」の範疇ではないということなのかなあ.