- 作者: 宮木あや子,今井キラ
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/07/06
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ねえ岸田、手をつないでくれないと、私は迷子になってしまうよ。
春眠
雨足は次第に強くなり、ざあざあという雨音は柔らかな檻のごとく、私をひとり、満開の桜の下に置き去りにした。
ひとりきりでは、迷子になることもできなかった。
「びっくりしてるけど、俺は今までどおり須藤さんが好きだから」
ピンクのうさぎ
「そんな偽善、いりません」
今までどおりって、何。今までと今の境目はなんなの。
収録作品は「コンクパール」,「春眠」,「光あふれる」,「ピンクのうさぎ」,「雪の水面」,「モンタージュ」の6篇.〈女による女のためのR-18文学賞〉大賞・読者賞受賞作家による官能小説短篇集.ということで主人公は全員女性(境遇はバラバラ),ヘテロとレズはあれどゲイはなし.すべての短篇が美しく,それ以上に痛ましい.セックスという手段を通じて,少女たちはバラバラの幻想を見る,みたいな.幻想を見る手段としてのセックスというか.ひとはセックスを通じて本当に分かり合うことはできるのか……という気持ちにもなる.良かったです.