竹内雄紀 『悠木まどかは神かもしれない』 (新潮文庫)

悠木まどかは神かもしれない (新潮文庫)

悠木まどかは神かもしれない (新潮文庫)

「アリババ?」
ボクの頭の中に、四十人の盗賊が一個の弁当をわけあっている姿が浮かんだ。
「つまり、お弁当がなくなったのは四十人の盗賊による組織的な犯行、だと?」
目をつぶったまま眉間にしわを寄せる篠原さん。だが、急に目を開けたと思ったら、いきなり破顔一笑
「あっ、間違えた。アリバイだな、アリバイ。メンゴメンゴの許してチョンマゲ」

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進学塾のアルキメデス進学会に通う小田桐,野田,望月の三人は,塾帰りに立ち寄るマッテルバーガーでのチーズバーガーが何よりの楽しみ.彼らの話題は,不思議なクラスメイトの美少女,悠木和のことが中心.抜群の知性と美貌で憧れない者のいない彼女は,ある謎を抱えていた.
目の前の勉強しか頭になかった小学生男子は,おバカな大人たちやミステリアスな美少女と出会って成長を果たす.池上線長原駅周辺を舞台にした「ズッコケ三人組」+「まほうびんぼう」(感想)みたいな感じの,とぼけたボンクラ味が実に楽しい.ふざけた大人たちがすごく良い味出してんのよ.開成中学だ麻布だと勉強に励む将来有望な小学生より,ろくに仕事しないしふざけたことしか言わないバーガー探偵のおっさんに憧れるのは仕方ないよね.カバーの「青春前夜の胸キュンおバカミステリの大大大傑作」というのは大げさにしても,決して嘘ついてるわけではないと思いました.いきなり「男子がキモい」から始まる(まあこれが本当にキモいんだ)角田光代の解説も,なんか愛情が感じられて良かった.タイトルばかり話題になっているけれども,そこから想像できるような変な尖り方はしてないし,ある意味タイトルで損をしているよなあ.