下永聖高 『オニキス』 (ハヤカワ文庫JA)

オニキス (ハヤカワ文庫 JA シ 8-1)

オニキス (ハヤカワ文庫 JA シ 8-1)

マナの発見により、人類は過去から未来への水平方向とは別の、垂直方向へ流れるもうひとつの時間軸があることをも発見した。つまり、一回目の書き換え、二回目の書き換え、三回目の書き換え、という、書き換え履歴の時系列だ。

オニキス

第1回ハヤカワSFコンテスト最終候補作を含む短篇集.過去を書き換えることのできる粒子が発見された世界で書き換えを観測する男を描く表題作「オニキス」,部屋の状況を反映して妖精(のようなもの)社会を生み出す装置とその部屋に住む男「神の創造」,自分にしか見えない類人猿の進化を幻視する男の不安を描く「猿が出る」,借金から逃げて並行世界を渡り歩く男の話「三千世界」,タイを彷徨う日本人旅行者が見た風景満月(フルムーン).アイデアはそれぞれの短篇ではっきりしてるし面白いものもあると思うんだけど,個人的には全力でノれるという感じではないのよね.全体的に話運びがなんか固い,というよりユーモアが足りないのかな.複数の短篇に出てくる「マナ粒子」の使われ方なんかを見ると,短篇よりも長篇向けだったのではないかなあとちょっと思った.