泉和良 『ボカロ界のヒミツの事件譜 2 名探偵エレGYちゃん様のボカロPデビュー』 (星海社FICTIONS)

「そうなのか……。っていうか、小四だっけ? そんな年で、もうボカロを聞くのか」
最近では小中学生の女の子にボカロが人気らしいということをよく耳にはしていたが……。
「聞くわよ。ネットだって普通にやってるし」
「ええ……」
俺が小学生だった頃のことを思うと到底考えられない。そんな小さな頃からネットに触れていたら、脳みその構造が俺達とは全く異なる生き物になるのでは、とさえ思えてくる。

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ジェバンニPこと新人小説家の泉和良と,ついにボカロPとしてデビューを果たしたエレGYちゃんが,ボカロ界隈周辺に起こる小さな事件をばったばったとなぎ倒す.カバーには“ボカロ×本格ミステリー”とあるけども,どう見ても日常の謎であろう.ニコニコ動画というコミュニティとシステムを存分に使いながら,やっていることは今どきどこでも見られないベタベタな人情噺.この道具立てでこんな直球の話をやるのか! みたいなギャップが素直に驚く.あまりに野暮天な主人公のキャラクターがだんだん愛おしくなってくるわ.俺,作った曲が100万再生されたらあの子に告白するんだ……みたいなメンタリティはいまいちピンとこないのは確かだけど,単に自分が現役世代ではないからかもしれない.ところで,表紙が初音ミクなのに,ミクを使って楽曲を作るひとがまったく登場しない(ほとんどリンでたまにルカ)のはなんなのだろう.ただの作者の趣味か.