アイザック・アダムスン/清水由貴子訳 『コンプリケーション』 (ハヤカワ・ミステリ)

コンプリケーション (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

コンプリケーション (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

それでも時計は動くはずがない。
だが、現実には動いている。
“チク”と鳴るたび、“タク”と響くたび、わたしの職人としての経験を侮蔑している。
物理法則をあざ笑っている。
まさに時計の奇跡だ。

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芝刈りの最中に死んだ父の遺品の中から,リー・ホロウェイは,一通の手紙を見つける.その手紙には,弟であるポールの死に隠された秘密があることをほのめかす内容が書かれていた.手紙の差出人に会うため,父の用意していたチケットでプラハへ飛んだリーは,ルドルフ二世の持っていた時計をめぐる謎に巻き込まれる.
ルドルフ・コンプリケーション.身につけた人物に不死をもたらすと言われ,神聖ローマ皇帝ルドルフ二世のために錬金術師を名乗るペテン師が作った時計.チェコスロバキア時代の闇,ある錬金術師の生涯,プラハのすべてが書かれたガイドブック,右手を切り取る連続殺人鬼…….弟の死の謎を追い,プラハの街を駆けずり回る男がたどり着いた結論とは.正直なところ,よくわからなかった.最後まで読んだ結果としてよくわからなくなったのはいいとして(実際そういう話なので).作中いくつも挟まれるプラハらしいエピソードが,なんかあんま線になっていないような気がするのよな.個々のエピソードは非常に不安を掻き立てるものなんだけど,どうもカタログ的というか,メインのストーリーを活かす方向に働いているかというと,いまひとつなんではないかなあ.