森川智喜 『半導体探偵マキナの未定義な冒険』 (文藝春秋)

半導体探偵マキナの未定義な冒険

半導体探偵マキナの未定義な冒険

「そう、あれ。どうする? ついでだから、お前も観てく?」
「いえ。私が映画を観ると、全部録画録音されちゃいますから、選択の余地なく、著作権侵害になってしまいますので」
「厄介な頭だな、おい」

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マキナことCIMN4は,おれのじいちゃんである坂巻博士が開発したAI搭載探偵ロボットの四号機である.じいちゃんが死んでしまったことによって,定期アップデートが失敗してしまったCIMN3愛称クリク,CIMN2愛称オーガスタス,CIMN1愛称イーディの三体は研究所から脱走してしまう.おれとマキナはエラーを発生しズレた思考をするようになった探偵ロボットを追いかけ街へ出るのだった.
ロボット探偵が活躍する“京都大学推理小説研究会の「秘密兵器」”(帯より)の最新作.ひょうひょうとした語り口から,恐ろしく地味で恐ろしくとんでもないことをポイっとやってくれるのが楽しい.SFミステリと言えなくもないのだけど,そう一言で表してしまうとまたなんか違う気もする.半導体頭脳の「ズレ」から発生した,探偵ロボットたちのおかしな行動を突き詰めていくと,そもそも探偵とはなんなんだろうか……みたいな根源にたどりつく,かもしれない.「探偵」の存在そのものについてをポップに描いているのは作者の作品に共通している点かな.それはさておき,ヒロインであるロボット探偵のマキナがとても可愛くてよかったです.