古橋秀之 『冬の巨人』 (富士見L文庫)

――ああ、そうか。
自分がなんのために生きているのか。その問いに、初めてはっきりと答えられるような気がした。
これを見るためだ。
そして、この事実を、そして実感を、自分の手でミールに持ち帰るために、自分は存在するのだ――

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2007年に徳間デュアル文庫から刊行された『冬の巨人』の加筆修正版.あとがきに曰く“「デジタルリマスター版」みたいな感じ”.分厚い雲と雪に覆われた薄暗く寒い世界,世界そのものである巨人とその身体に住む人々,次世代に夢を託す学究の徒たち.7年程度では古びたところはないし,改めて読んでも傑作だなあと思う.欲を言えばもう少し尺が欲しかったところではあるけれど,これだけの広がりを持つ物語を,これだけ少しの言葉で語りあげるのは流石だと思う.