日日日 『はこぶねエトランゼ』 (講談社BOX)

はこぶねエトランゼ (講談社BOX)

はこぶねエトランゼ (講談社BOX)

恋愛。その言葉には実感がない。でも、他人がそう認識するくらいに、私の泡路くんへの気持ちはその恋愛とやらに似ているのだろう。
ならば、いい。
言葉の問題ではない。
恋愛と呼びたいなら、呼ぶがいい。

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子供が嫌いな干支島さんと,大人が怖い泡路くん.いつか大人たちが絶滅する世界に立つために同盟を結んだ二人の青春.
ちーちゃんは悠久の向こう』,『うそつき 〜嘘をつくたびに眺めたくなる月〜』,『ピーターパン・エンドロール』に続く,作者自身も書いたことを忘れていた(10年近くPCに埋もれていたらしい)という香奈菱高校シリーズ完結編.二人だけの強固なセカイの殻がやがて破れる的なストーリーは,いま読むと高校生作家の精一杯かつフレッシュ.尖っているようでプリプリしている.なんというか,読者の身なのに恥ずかしくなるという.書き下ろし短篇は作中のキャラクターとの対談形式を取っている.こちらも一歩間違えるとかなり恥ずかしくなりそうな感じなのだけど,やけに切ない読後感を残す話になっている.このあたりは10年の進歩が見えるところかね.