ユッシ・エーズラ・オールスン/吉田薫訳 『特捜部Q ―知りすぎたマルコ―』 (ハヤカワ・ミステリ)

特捜部Q ―知りすぎたマルコ― ((ハヤカワ・ポケット・ミステリ))

特捜部Q ―知りすぎたマルコ― ((ハヤカワ・ポケット・ミステリ))

一文字打ちこむたびに、心臓がドクンと鳴り、体から血液が外に出ていった。最後の報告を作成し、送信ボタンを押したとき、ルイはおぼろげな意識の中で電波が届かない場所にいることを知った。
近づいてきた足音がすぐそばで止まった。手から携帯電話が奪い取られた。それが、ルイ・フォンの最後だった。

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外務官僚の行方不明事件を捜査することになった特捜部Q.公金横領の絡んだこの事件の裏で,叔父の運営する犯罪者組織から脱走した15歳の少年,マルコが知ってしまったこととは.
シリーズ第五巻.事件の鍵を握ってしまった少年をさまざまな勢力が追いかける.ストーリーは今回わりとシンプルになってるかな.カール,アサド,ローセのいつものユーモラスな三人組と,つかず離れずの逃亡生活を送るマルコの恐ろしいほどの緊張感がサンドイッチのように交互に折りたたまれて,ぐいぐい読まされてしまう.物語の核にアフリカ援助の闇やデンマーク社会の闇を置くあたりに,「カルテ番号64」(感想)と同様の社会派のにおいを感じるけど,あんま気にせず素直に楽しい.あと今回はもうひとりの主人公マルコがかわいくてよかった.聡い男の子が虐げられながら頑張る話が好きなひとにも良いかもしれないですね.