岩波零 『ゾンビ世界で俺は最強だけど、この子には勝てない』 (MF文庫J)

世界のルールが変わったことはわかっている。今日からは、ゾンビを上手に殺せる人だけが生き延びられるのだ。

けれど、そんな合理的には動けなかった。

ゾンビになってしまった人を殺したくないという気持ちに、嘘をつけなかったのだ。

学校で突如発生したゾンビパンデミック。脱出しようとした幸坂優真は、逃げる間際にゾンビに噛まれてしまう。ゾンビ化と死を覚悟してひとり河原に佇んでいた彼は、同じく逃げ延びてきた友人の妹、日向晴夏と数年ぶりに再会する。優真は晴夏に、自意識を失う前の最期のお願いをする。

ゾンビパニックの極限下で繰り広げられる「極限状態ラブコメ」。お色気シーンあり、大切な人のゾンビ化あり、キスシーンあり。五日間の作中時間にすべてを詰め込み、非常にサクサクと話が進む。もともとゾンビものを書きたかったとのことで、良くも悪くもゾンビ映画のお約束を忠実に踏襲していると思う。ゾンビになったのに意識を保っているとか、人間に戻れるだとか、その理由はほぼ明かされないだとか、都合が良すぎるところも多いので、ある程度広い心はいるかもしれないけど、そういうものだと思って読むぶんにはまあ。まさにB級ゾンビ映画を見るようにさっくり読めるのはいいと思いました。