手代木正太郎 『異人の守り手』 (小学館文庫)

「横浜にはね、陰ながら異人を守る日本人がいるの」

「ほう?」

「居留地の外国人の間で流れている噂ですけどね。ハインリヒさんに何かあっても、その“異人の守り手”が助けてくれるかもしれないわ」

慶応元年、開港したばかりの港町横浜。日本人に加えて各国の外国人たちで賑わう、活気に溢れた町は、攘夷志士たちが起こした生麦事件・鎌倉事件から間もないこともあり不穏な空気が漂っていた。

幕末。新時代の始まりを迎えつつある横浜に、攘夷派から人知れず外国人を守る者たちがいた。「邪馬台国を掘る」「慶応元年の心霊写真」「心配性のサム・パッチ」の三話からなる、作者初の本格時代小説。慶応元年からはじまるストーリーのタイムラインや、同時代の事件、登場人物たちは史実をベースに置いているのが新鮮。もともと時代劇風ライトノベルを描いてはいたけど、よりハード時代劇寄りと言いますか。自前の作風に、博覧強記が加わってけれん味が効きまくった結果、いつも以上にはっちゃけたエンターテイメントになっていたと思う。文庫一冊にかけたとは思えない参考文献の数は伊達ではない。楽しかったです。ファンの方も、変わった時代エンターテイメントを求めるひとも気軽に読んでみるといい。