扇友太 『ブラックガンズ・マフィアガール』 (MF文庫J)

電賊のはじまりは十八年前。ストリートで育ち、裏組織の下っ端だった若い男だ。

どこの国にもいる小悪党だが、かれは大きな野望を抱いていた。

それは自分のマフィアを作ること。だが、ただのマフィアではない。

はるか昔に廃れた存在――義と野心を抱くイタリア・マフィアだ。

極限のリアリティを実現した仮想世界、「VRSNS」。古き良きマフィアを目指して誕生した電賊〈ウルヴズ・ファミリー〉の殺し屋、マーリア・ポロヴェロージと、普通の高校生日野ナオト。大切なものを失ったふたりは仮想空間で出会う。

もうひとつの社会となった仮想空間に巣食う電賊という闇。古き良きサイバーパンクにして、古き良きマフィアものの匂いがするボーイ・ミーツ・ガール。『ザ・グリード』を目標にエンターテインメントを追求したと言っている通り、ジャンルをまたいだエンターテインメントのお約束をなぞることにかなり意識を割いていると感じた。目新しさよりも泥臭さを感じる部分も多い。良く言えば安心感のある、悪く言えばベッタベタというか。でも、やりたいことがはっきりしているので嫌いになれないタイプの小説、というかな。どれか好きな要素があれば、案外刺さるところがあるかもしれない。