逆井卓馬 『豚のレバーは加熱しろ(8回目)』 (電撃文庫)

「今さら……今さらそんなことを!」

シュラヴィスは咆哮した。

「王になれ、王であれと言われたからそうしたのに! 王になどならなければ……誰が人を殺めたいなどと思うか! 誰が罪もない人たちの自由を奪いたいなどと思うか! 誰が友を裏切って独りで死にたいなどと思うか!」

誰にも胸の裡を明かさないまま、一方的な政策を押し通そうとする若き王シュラヴィスと、解放軍を率いるノットの最後の戦いが近づきつつあった。王の思惑がわからないまま、戦いをやめさせようとする豚とジェス。その裏にはいくつもの真実が隠されていた。

離れたくない。一緒にいたい。これで終わりにしたくない。

でももう、終わりなんだ。

豚と少女の恋物語は、これでおしまいなんだ。

シリーズの一区切りとなる第八巻。愚かな王の孤独、新たな英雄の誕生、130年に渡って続いた王政の始まりと終わり、ふたつの世界をまたいだ行きて帰りし物語、少女と豚の恋。せんぶを最後までやりきり、作者だけの物語と世界を完成させた。ミステリの手法を使って、行動原理や世界の仕組みを明かす語り口が、最後までわかりやすく鮮やかだった。シリーズの集大成といえる、クライマックスの4ページに渡る独白も見事でした。完全燃焼を芯から感じられる最高の最終巻だったと思う(もう一冊だけ出るようだけど)。今からでも追いかけてほしいと思える傑作でした。