立川浦々 『公務員、中田忍の悪徳7』 (ガガガ文庫)

「誰の立場から叩いても不都合のない、妥当な悪の存在をそう呼ぶそうだ。俺たち公務員は、たとえ己に瑕疵がなくても、“公共の敵”(パブリック・エネミー)の誹りを受けねばならん存在だと、俺は考えている」

「……」

「俺たち福祉を預かる者は、国民と保護受給者(ケース)の間に立ち、すべての泥を被らねばならない。国民の抱く拙い幻想である“理想の福祉”が、国民の見えないところで実現され続けているのだと、甘い夢を見せ続けなくてはならない」

私は何も言えなくなって、ただ小さく頷いた。

アリエル、一ノ瀬由奈、御原環、そして中田忍。耳神様のルーツを探る耳島への旅から帰った一行には、それぞれ小さくない変化が訪れていた。

新卒公務員となった一ノ瀬由奈と中田忍の出会い、大人になり切れなかったふたりの少女、“責任”を負うことを知らないまま社会に出てしまった異世界エルフ。誰かを愛することができず、誰からも愛される資格を持たない中田忍の秘密と異常性。いくつもの重大な事実が明らかになり、終演の時が近づく第七巻。次が最終巻ということもあってか、あとがきに編集者への謝辞が多めに書かれているのだけど、ここまで具体的な仕事を挙げて感謝を述べたあとがきは初めて読んだかもしれない。良い編集者に恵まれたシリーズだったんだね……。現代日本だからこそ描けたファーストコンタクトの傑作。完結した暁には日本SF大賞を穫ってほしい。