丈月城 『カンピオーネ! XXI 最後の戦い』 (ダッシュエックス文庫)

カンピオーネ!  XXI 最後の戦い (ダッシュエックス文庫)

カンピオーネ! XXI 最後の戦い (ダッシュエックス文庫)

「あれだよ。たぶん“忖度”ってやつがあったんだよ」

「忖度?」

「魔王内戦」を生き残った最後の神殺しと最後の王,戦いの決着.足掛け9年,21冊をかけたシリーズの完結編.時事ネタありボスラッシュあり魔王と神の共闘ありと,まさに集大成.このシリーズらしいラストバトルだと思う.どことなく「デモンベイン」を思い出すラストも良かった.しばらく低調な印象もあったけど,しっかり締めくくってくれたと思う.

ツカサ 『銃皇無尽のファフニールXV アンリミテッド・シャイン』 (講談社ラノベ文庫)

銃皇無尽のファフニール15 アンリミテッド・シャイン (講談社ラノベ文庫)

銃皇無尽のファフニール15 アンリミテッド・シャイン (講談社ラノベ文庫)

イリスたちにも見えているだろう。

地球の重力圏を抜けた遥かな宙で、二体の怪獣が鏡合わせのようにその姿を現していく様子が――。

――さあ、始めよう。怪物同士の戦いを。

地球と月の狭間。

真空の宙に現出する第九災厄(ナインス・ドラゴン)

外宇宙から到来した,すべてを喰らう怪物,アンゴルモア.物部たち竜伐隊は最後の決戦に挑む.

シリーズ完結となる15巻.最後まで「女の子全員を平等に扱うこと」を第一にしたハーレムものだった.ラストバトルにまで全員平等に見せ場が用意されていた.ヒロイン結果的に,キャラクターの濃淡がなくて,話が進むほどにキャラクターの印象が薄くなっていくという,稀有なハーレムものになっていたように思う.全員がメインヒロインを目指した結果,メインヒロインもサブヒロインもモブもいない話になってしまった.こだわりというか変な頑固さが最終的に話の足を引っ張っていたように思う.難しいなあ.

さくらいたろう 『せんせーのおよめさんになりたいおんなのこはみーんな16さいだよっ?』 (MF文庫J)

せんせーのおよめさんになりたいおんなのこはみーんな16さいだよっ? (MF文庫J)

せんせーのおよめさんになりたいおんなのこはみーんな16さいだよっ? (MF文庫J)

期限は一週間。

たった一週間で、俺は四人の中から同い年である許嫁を見つけ出さなければならない。

そうしなければ、『教師になる』という俺の夢が叶えられなくなるのだから――。

日本の教育界を牛耳る徳田院家の養子である高校生,六浦利孝は,当主にして養父の大五郎からひとつの試練を与えられる.それは,四人の小学6年生の中にひとりだけ紛れ込んだ同い年の許嫁を引き当てること.これに失敗したら,教師を目指す利孝の夢は養父に潰されてしまう.

「この中に1人,合法ロリがいる!」みたいな感じの,第13回MF文庫Jライトノベル新人賞佳作受賞作.四人のキャラクターをとりあえず紹介しました,というだけでほぼ尺を使い果たしており,話にまったくメリハリがない.キャラクター小説に関わらず,キャラクターの印象が薄くなってしまっている.新人賞作品なのにまったく完結していない(それもしょうもない理由で)のも印象が悪い.読みにくいとかそういうことはないんだけど,悪い意味でしょうもなかったなあ.

七飯宏隆 『放課後限定勇者さま。』 (電撃文庫)

放課後限定勇者さま。 (電撃文庫)

放課後限定勇者さま。 (電撃文庫)

「あのなスヴァン。不条理ってのはさ、『こうあるべき』という自分ルールを世界や他人に押しつけるところから始まるんであってさ。最初っからものごとが自分の思いどおりにならないって理解してれば、感じるはずのないものなんだよ」

スヴァンは少し考えてから言った。

「……それはつまり、世の中になにも期待するなということですかな?」

「まあ、そうだな」

高校生の格里終夜は,ある日突然異世界から召喚されてしまう.露出の多い美少女と言葉をしゃべるたくさんの猫から,『勇者』としてともに『魔王』を倒してほしいと頼まれる終夜だったが,よくよく聞いてみるとどうやら人違いで召喚されたらしく.

異世界転移ファンタジー.このころ(2009年5月発売)の電撃文庫ではメジャーな概念ではなかったのか,「()世界」といちいちルビがふられているのが新鮮.ストーリーは今となっては普通かな.『勇者』,『魔王』,『伝説の剣』といった言葉がかぎかっこで囲われているのは何らかの意味があるのだろうとか,すべての並行世界を滅ぼす『魔王』とか,深読みしたら楽しそうなところもあるけど,良くも悪くもさらっと読める.悪くはないと思います.

樋口恭介 『構造素子』 (早川書房)

構造素子

構造素子

そのときこの場に新たな構造素子が生成され、新たな構造が生成を開始する。

そのときこの場に新たな世界が生成され、新たな宇宙が生成を開始する。

あなたはあなたの言葉を書き始め、あなたの言葉があなたを書き始める。

あなたと呼ばれる構造素子。そこから始まる全ての構造。

これはあなたのための構造だ。

エドガー・ロパティンの父,ダニエル・ロパティンは,H・G・ウェルズやエドガー・アラン・ポーに私淑する売れないSF作家だった.彼の死後,エドガーは未完の草稿『エドガー曰く、世界は』を母から渡される.

第5回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作.父と子の物語であり,書くこと,語ることそのものについての物語でもある.物語はいきなりL-P/V基本参照モデルなる宇宙の階層構造モデルの説明から始まり,そこから,人類の滅亡と二度目の人類の誕生,並行宇宙,スチームパンク,言語SFなどなど,ありとあらゆるSFの要素へと展開する.

選評でも言われているのだけど,かなり難しいしわかりにくい.最初の印象は「真面目な円城塔」.どことなく神林長平を連想したりもした.「なるほど……なるほど?」みたいな感じで,よくわからないなりに面白く読んだ.巻末の梗概が理解の助けになった(ネタバレにあたるので最後に読むのがいい)のだけど,これはもともと作品の一部だったのかな.帯の言う「現代SF100年の類い稀なる総括」も,決して大げさな話ではないと思う.