日日日 『魔女の生徒会長』 (MF文庫J)

魔女の生徒会長 (MF文庫J)

魔女の生徒会長 (MF文庫J)

帝都世紀末学園の生徒会長・剣シロオは魔女で,安全靴を常時着用していて,学園の正義を守るまっすぐで純粋な強いひと.
日日日の新シリーズ.面白かった.変な方向に立ちまくった生徒会のメンバーもさることながら,ストーリーラインもきちんと理に適っていて単なるキャラクター小説の枠には収まらない.
謎の行動原理を持つ陽月オセロ(今回の真のヒロイン)にもやもやを抱かされたまま読むことになるんだけど,クライマックスまで読めばすっきり解消,明かされる真実にあぁ! と膝を打った.思いつくだけなら簡単なアイデアも,ちゃんと伏線を敷いて,らしい行動をとらせ,救いを用意する構成はオーソドックスながらカタルシスがあった.
続編は……あまり話を広げすぎると「蟲と眼球」のような結末になりそうな不安も正直あるんだけど,シロオとミミクロの関係がどうなるのか,この一点が強く気になる.素直に楽しみに待つことにします.

内山靖二郎 『クダンの話をしましょうか』 (MF文庫J)

クダンの話をしましょうか (MF文庫J)

クダンの話をしましょうか (MF文庫J)

人面牛身と伝えられることの多いクダンを無愛想で不器用で角を生やしたおにゃのこへと萌え擬人化.日本人の発想力はほんと底なしだ.
クダンとは,は説明しなくてもまあ分かるよね.伝承が諸説あるなかで,予言を終えるとすぐに……という説を下敷きに,作者独自の解釈でストーリーを構築.優しくも切ない,出会いと別れの物語に仕上がっています.
固有名詞に妖怪や怪現象が多く出てくるにも関わらず,伝奇的な色合いはかなり薄い.作者の別シリーズ「神様のおきにいり」は人間と妖怪の共存がテーマのひとつにあるのだけれど,対してこちらは人間と人間とのつながりそれ自体に強く焦点を当てている.人間関係の複雑さやままならなさをやるせなく描いており,ひとことでいって切ない.そんな切ない本編と,そこに挟まれる幕間で描かれるクダンのコミカルな日常のバランスも上手い.決してハッピーエンドとは呼べない,それでいて希望が見える終わり方にも救われる.
というわけで非常に面白かった.前も同じことを書いた記憶があるけど,デビューから本を出すたび着実に面白くなってきているのが素晴らしいと思う.これも続きにぜひ期待したい.