福田政雄 『殿がくる! 〜ニッポン最後の日!?〜』 (スーパーダッシュ文庫)

殿がくる!ニッポン最後の日!? (集英社スーパーダッシュ文庫)

殿がくる!ニッポン最後の日!? (集英社スーパーダッシュ文庫)

人物がとても良い.どのキャラクターもすごく生き生きしている.1巻,2巻でも光っていたキャラ造形が,シリーズ最終巻で完成された.そんな感じ.短い文とさりげないフレーズを上手く使い,強烈な印象を効果的に読み手に与えるテクニックを作者は心得ていると思う.キャラクター小説としては文句なし.
ただ,これも1巻から感じていたことだけど,どうしても啓蒙臭が見え隠れしたのが気になった(意図したものかどうかはわからない).たぶん作者がやりたかったのはラノベレーベルで政治シミュレーション小説を書くことだったんだろうけど,やはり題材としては無理があったかなぁ,という気はする.日米の駆け引きとか,政治小説としてはちょっと安っぽく見えるんだよねぇ(知識ではなく,見せ方の問題).そこがきっちり書かれていたなら,もの凄い傑作になっていたはず(もの凄く難しいだろうけど).意欲は買える.
将来性はかなり高い作家だと思う.個人的に応援していきたい.