日日日 『蟲と眼球と愛の歌』 (MF文庫J)

前半部のおとぼけ具合は実に「らしくて」凄く好き.ブレイクサンとカヂリ,グリコと美名と蜜姫のやりとりの阿呆らしさとかほんのり漂う優しさとかそれぞれの立ち位置の対比とか.私は日日日のテキストの書き方だけが好きでずっと追ってきた,つもりだったんだけど,根本の技術力も着実に身についているとひしひし感じる今日この頃.
反面,後半部.直接的な破壊とか生理的な残酷の描写はあまり上手ではないような.何よりここで描くだけの必然性が薄い.前半と後半でギャップを持たせようとの狙いなんだと思うけど,なんとなく「溝」だけが残ったように私には思えた.
で,ラスト〜あとがきについて.次巻で完結とのことだけど,トリックスターデウス・エクス・マキナが何人もうろついている世界なんで,物語を決着させるだけならたぶんどんな風にでも書けると思う.それだけに,どんな斜め上を見せてくれるのか,或いは無難な着陸をするのか,期待(と不安)はけっこうでかい.信者を宣言した身だし何が起きてもついていくよ私は.
このへん『狂乱家族日記 六さつめ』で書いたのとまったく同じ感想になっちまって恐縮でありますが,受ける印象がほとんど一緒だったもので.片や「神」,片や「世界」と話の芯が一緒っちゃぁ一緒だからかも知らん.