小山恭平 『飽くなき欲の秘蹟(サクラメント)』 (ガガガ文庫)

飽くなき欲の秘蹟(サクラメント) (ガガガ文庫)

飽くなき欲の秘蹟(サクラメント) (ガガガ文庫)

「ばれないと思ったんじゃない? 自分に異父妹がいるなんて、ばれようがないと思ったんでしょー。――でもさあ、現代では秘密とか許されないからねぇ。名前を打ち込んでエンターキーを押すだけで、すべてのエピソードが開示される時代だもん」
……なんだか窮屈すぎないだろうか。
栄誉を得ると、勝手に目につく場所に勲章を貼り付けられて。
悪事を犯せば、その身を十字架に磔られてさらされる。

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異能とは,ひとの強い願いとともに現れる奇跡.高校生の世杉見識は,そんな異能を買い取り転売する商店で働いていた.店主のゆおとふたりだけの小さな店はビジネスチャンスを求めていた.
第9回小学館ライトノベル大賞審査員賞受賞作.願ったり望んだりしたことが「異能」というちょっと強い形で顕在化する世界において,その願いや望みがどのようにもたらされ,誰に何をもたらすか.バトルをしない異能もの,というより,「異能」をだしにした人情ものというのかな.いろんなすれ違いや思い込みから生まれた異能が,さらにすれ違いや思い込みを強めたり,逆にかすがいになってたり.そういう人間関係のあれこれが楽しい.デウス・エクス・マキナな仕掛けが強すぎるのがちょっとどうかなと思うけど,すごく好きなタイプの小説でした.