- 作者: さがら総,カントク
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2011/05/25
- メディア: 文庫
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『なにもしないということは、もっとも困難なことであり、もっとも知的なことでもある』
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とぼくらの神さま、オスカー・ワイルドは自身の著作で述べている。
裏を返せば、知的な人間には程遠いぼくにとり、『なにもしない』なんて選択肢は愚の骨頂だったということだ。気がついたときにはすべてが遅かった。
エミはぼくの上から滑り落ちるようにして地面に立つと、胸に手を当て、いっそうの高みへと駆け上がるようにして声を響かせる。
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地中海の陽光をはらむ髪に、水晶細工のような瞳の造形。アンバランスであるがゆえに完璧なバランスのとれた矮躯。細く小さな喉が上下する様すら、ある種の清冽さを保つ。
彼女の容姿と歌声は互いが互いのために存在して、たがいがたがいをも凌駕して、たがいがたがいのみ装飾している。
神さまが日曜日につくりあげた、妖精の芸術品みたいだった。
体育祭の近づく九月のある朝.筒隠月子と二人乗り自転車通学中の横寺を襲ったのは,宇宙怪獣ツインテールの月面宙返りからのジャンプキック.そのちっちゃなツインテールは親友ポン太の妹,エミだったのだが.
笑わない猫神様の騒動も,ひと段落ついたかと思いきやのもうひと騒動.カバーには「爽やか系変態ラブコメ」とあるけど,ラブやコメではなくコミュニケーション特化の物語だよな.本音を言葉で語ることが正しいなんて嘘っぱちだし,「約束」なんてその場の出まかせちっとも重要じゃない.とばっさり言ってのける物語は読んでいて恐ろしく気が滅入る.テキスト力や描写力は抜群に高いだけにぐっさぐさとくる.デウス・エクス・マキナ気味にラストを持っていくこともあって,コミュニケーションの齟齬を解決するには「神」を引っ張り出す以外ないんでねーの,というところに気持ちを持って行かれる.そりゃ正論かもしれないけど,もうちと言い方があるだろと.ほんとうは結論は違うのかもしれないし,穿った読み方をしているのかもしれないけど,作者はたぶん性格悪いよね.どういう着地をするのか,続きを楽しみにしております.