秋口ぎぐる 『ひと夏の経験値』 (富士見ドラゴンブック)

ひと夏の経験値 (富士見ドラゴンブック)

ひと夏の経験値 (富士見ドラゴンブック)


男子校という空間は地獄なのだ。あらゆる生徒たちの精神をむしばみ、無感動な人間へと変貌させていく地獄。夏休み前だからといって生徒たちが「なにかが始まりそうな予感」を覚えるようなことはない。「特別な高揚感」を覚えるようなこともない。ただ日々は淡々と流れていく。
ファンタジーだ! 当たり前だ! こないだの時かけの感想と一緒ですが.しかし時かけよりは身に染む部分は確実に多かった.TRPG 経験こそ無いものの,男子校で怠惰なオタグループに属して緩い交流をしてた自分だからね.だから,個人的には「一ゾロ」よりも(そんなことはみんな気づいていたんだよ),うえに引用した台詞にズン,とやられた.お前は俺か!? の心境.我ながら嫌なツボだ.
最後の最後まで「いい話」を貫いていたのは,微妙に評価が割れるかもとは思ったけど,私はとても好きだ.上手く言えないのだけど,救われたような気分になって,良い読後感だった.夏の終わりに読むのにちょうどいい一冊でした.
しかしあれだ,読むひとの年代とか経歴とかで感想にここまで温度差が出る小説もそうそう無いと思う.感想サイトめぐりもそういう意味で面白かった.去年「25歳以下の若者」と揶揄されてもにょった経験の持ち主として.