日日日 『アンダカの怪造学IV 笛吹き男の夢見る世界』 (スニーカー文庫)

うーむ.いろいろあるけど,物語やバトルのインフレ感が半端ないことがいちばん気になった.思わせぶりな「裏」のあるキャラクターをどんどん登場させるのはいいとして,その存在感が時と共にずんずん軽くなっているような.作者は伏線を張るのは得意としても回収するのは苦手なのか.
伊依に関しては信念の通った描き方をしていて良かった.なんだかんだでこの作品の魅力はそこに尽きると思うので.ただその他のキャラの多くは,ミステリアスな世界観を演出するための装置にしか見えなくなってきた.ぬう.
伊依の対立軸となるアルテの登場で,物語のテーマに疑問を投げかけたこと(あとに続く異能バトルの中で曖昧に結論をぼやかされ肩透かしを喰らったけど)や,アンダカで起こっている「戦争」の謎など,内に外にと世界が広がって「おっ」と思わされる部分は多かった.
しかし全体としては,すっきりしない読後感としか.