桜庭一樹 『少女七竃と七人の可愛そうな大人』 (角川書店)

少女七竈と七人の可愛そうな大人

少女七竈と七人の可愛そうな大人

けれん味の強い飾った文体での細やかな,ねちこいねちこい描写が凄まじい.気持ち悪いと言うべきか恐ろしいと言うべきか.『推定少女』などの作品でも「におい」で人間を表現する,似た手法を使っていたけれど,この作品では浮世離れを加速させつつ存在感を更に濃密にさせている.少女,少年,老境の犬,中年の女と話ごとに視点を変えることで,「せまいせかい」が浮き彫りにされているのが個人的にすごく良いと感じた.断絶しているようでも関わらずにはいられない絶望感ていうのかね.読みながら途方にくれるという感覚を久しぶりに味わったような気がする.うん,良かった.