深見真 『ゴルゴタ』 (徳間書店)

ゴルゴタ―Golgotha

ゴルゴタ―Golgotha

「軍隊を動かすのが正義であってはいかん。大義だ」

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帯の煽り文句で社会派小説かと思ったら社会派小説の皮を被ったバイオレンス小説,のような社会派小説? でした.ストーリーラインは悲劇的な復讐者を扱ったかなりシンプルなもの.ハリウッド映画風というか,読みながら予想を大きく外すような描写はほとんど無かった.このあたりから受ける印象は作者の既刊とあまり変わらなかったかな.
大きな違いは特殊能力者が出てこない,という一点.主人公真田は現代日本が舞台の小説としては超人的過ぎる戦闘能力を持っているのは間違いない.けれど,その力は決して特殊なものではなく,自衛隊特戦群の訓練や実戦,努力によって身につけたもの.自衛隊での生活や組織について,詳細かつ説明的過ぎない描写が上手く,その化け物じみた能力にも十分な説得力が生まれていた.これ読んで自衛官には絶対に逆らっちゃなんねえと思ったもん私.過去の作者の作品のどの特殊能力者にも負けない,どころかすべてを凌ぐような強い迫力があった.「深見真の最高傑作」との意見にも頷ける.
映画や銃器に関する薀蓄,そしてクライマックスのシーンをゴルゴタの丘に喩えちゃう作者のセンスのカッコよさも大好きだ.面白かったー.