白倉由美 『おおきくなりません』 (徳間デュアル文庫)

中年の小説家ともと少女漫画家の少し不思議な同居生活五編.三十五歳の引きこもりから十八歳の女子大生へと転身したヒロイン・麻巳美が面白い.三十五歳という年齢にそぐわない言動は話を追うごとに少し変わった,から,常軌を逸する,へと変わっていくのは若干鼻白まないでもなかったけど,周囲のおかしなひとたちとの不思議なやりとりは楽しい.自己主張をしない不思議さというのか,傍から見ればおかしなひとたちばかりが登場するんだけど,もしこの中に入ることが出来たならごく自然に,馴染めるんじゃないかなあという雰囲気のある物語.
個人的には第四話「赤ずきんちゃん、電車コロボックルと道草する」が凄く良かった.

「だってこの話は赤ずきんちゃんと同じパターンなんだから、この後どうなるか決まってるじゃないか」
「決まってる? 月哉さん、お話の行く先なんて、決まってなんかいないよ」

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冬には続きが出るとのことなので楽しみに待ってます.