冲方丁 『スプライトシュピーゲルIII いかづちの日と自由の朝』 (富士見ファンタジア文庫)

MSS の 3 人娘の戦いを描くもうひとつの「シュピーゲル」 3 作目.相変わらず「オイレン」と比べると漫画的な面が目立つ.超人的・記号的キャラクターが跋扈するカートゥーンのイメージ.意図的に作風を離そうとしてるんだろうけど「オイレン」を読んだ直後だと違和感が残るわな.2 つの物語がリンクしていくに連れてこのギャップがどう埋まっていくのか気になるところ.恋愛色もかなり薄いのだけど,その代わり 3 人娘のちょっとした気遣いや水無月×冬真のやりとりを細やかにフォローしている印象.さすが抜かりは無い.
話のほうは『24』のようにリアルタイムで話を進める意欲的な構造.なのだけど,普通に読む分にはシンプルでスピーディな物語,という以上のメリットはあまり伝わってこなかった.あとこれはあくまで私だけの感想ですが,前述したように超人的なキャラクターが多く,物語自体に時間制限があることもあり,「たぶんなんとかなるだろう」的な,楽観的な読み方が出来てしまうのも個人的にはマイナスだった.「オイレン」のような緊張感を持てなかったのよな.