カート・ヴォネガット・ジュニア/伊藤典夫訳 『猫のゆりかご』 (ハヤカワ文庫SF)

ドラッグ・ストアを一手にする人間が世界を支配する。
まず、ドラッグ・ストアのチェーン、食料雑貨店のチェーン、ガス死刑室のチェーン、それに国民的競技から、共和国の建設をはじめよう。憲法をつくるのは、そのあとでいい。

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若き日のジョーナは,広島に原子爆弾が落ちた日,アメリカの重要人物たちは何をしていたかの記録を書くための資料集めをしていた.原爆開発者のひとり,フィーリクス・ハニカー博士の足跡を追っていたジョーナは,プエルトリコ沖のサン・ロレンゾ共和国へと辿り着く.
ボコノン教徒となったジョーナが,かつて迎えた世界の終わり.そこへ至るまでの色んなごたごた.政治とか宗教とか人間とか,たっぷりの皮肉を込めて全 127 章で描かれる.ほとんどの章は断片的なものなので比較的読みやすいのだけど,込められたものの密度は半端ない.なるほど「彼の小説を特徴づける要素は、この中にまんべんなくちりばめられている」.揃いも揃ってしょうもない登場人物たちのドタバタは,ナンセンスでやたら楽しい.素晴らしいものでございました.