北元あきの 『竜王女は天に舞う5』 (MF文庫J)

「私は彼の犬なのよ」
「人と獣の恋物語はね」
リラはほんの少しだけレニという女のことが分かった気がした。だからといってどうすることもできなしない。それは人生のどこかにあった分かれ道で、レニ自身が選んだ道の結果なのだから。
「悲劇しかないのよ、レニ・ルクセンブルク

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図らずして〈竜の箱庭〉に揃うことになった〈血塗れの竜王女〉.何者かによって整えられた舞台で,リンドブルムの叡智をめぐる戦い・ヴァルハラ舞踏会はひとつの結末を迎える.
「第一部【完】的な」*1シリーズ最終巻.〈血塗れの竜王女〉とパートナーそれぞれの結末.シグ/ルノア/リラ,ヒューゴ/エリーゼ,ザウエル/グスタフ/クロイツェル.それぞれの関係を,バトルロイヤルのルールにうまく乗せて,容赦なく描ききっている.生き残れるのはひとりだけという過酷さをしっかり捉えることが,話の苛烈さを増すことに直結していたように思う.ヒューゴとエリーゼのコンビに肩入れして読んでたってのもあるけど,敗者を突き放すような描写はなかなかクるものがあった.
思いのほか早く終わった,というより,余力を残して「終わらせた」感覚が強い最終巻でした.先行作品の例がいくつもあるので続くのがいいとは一概には言えないのだけど,やっぱもったいない気がするなあ.ともあれ,次回作を楽しみにしています.

*1:あとがきより