森野樹 『レッドアローズ』 (講談社BOX)

レッドアローズ (講談社BOX)

レッドアローズ (講談社BOX)

キャッチャーミットにズバンで三振、ぐわーっと歓声これ最高。
「ストライク、バッターアウト!」
球審の声もあんま聞こえないワーワーワー。
あいつもあいつもあいつもあいつも大空最高大空最高わっしょいわっしょいわっしょいわっしょい!
振り向いてスコアボードをチラ見だ。
154km/h
やばい。今日もきてる。

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大空昇太郎はプロ四年目の投手.一流軍団シャイニングスで頭角を表しつつあったその年,覚えたてのフォークで危険球退場したことをきっかけに,フォークボールが投げられなくなってしまう.そのまま戦力外通告を受けた大空は,トライアウトの会場でかつての 200 勝投手・本郷に声をかけられ,弱小球団レッドアローズに入団することになる.
第 5 回講談社BOX新人賞Powers 受賞のデビュー作.プロ野球をテーマにしたスポ根小説.古き時代のスポコン漫画をゼロ年代風の文体(上記引用部分のような)で書き起こすとこういう感じになるのかな.山奥で修行を積んだ結果 180km/h オーバーのストレートを習得する大空といい,山奥に(なぜか)住んでいる武士と木こりをドラフト入団させたりと,今どきちょっと見かけないくらいのロマンが全面からあふれ出ている.
シャイニングス会長の謀略で 9 人ギリギリまで人数を削られたレッドアローズ.球団の存亡と日本プロ野球の未来を背負い,シャイニングスと戦うことになったレッドアローズの運命やいかに!? 「野球小説」と呼ぶにはいろいろ足りないものも多いと思うのだけど,見せ場を心得たトンデモ野球やトンデモ特訓には終始わくわくしっぱなし.素直に楽しかった.「転転転校生生生」とあわせて,軽い気持ちで読んでみるといいと思うよ.