天原聖海 『翼姫 ─closed summer closed sky─』 (講談社BOX)

翼姫 -closed summer closed sky- (講談社BOX)

翼姫 -closed summer closed sky- (講談社BOX)

「で、その羽衣伝説の系統の中でもちょっと珍しいものが比良賀町にあるんだね」
促されて馨が本のページをめくる。
「『天津人』──っていうそうなんだけど」
その天津人なる天女は羽衣ではなく、背中に白い翼が生えていたというのである。

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脚を故障し,かつて嘱望されていたバスケットボール選手の夢を絶たれた堤裕司.幼馴染みに誘われて入った民俗学研究会のフィールドワークで,羽の生えた天女伝説と「羽焚き祭」という風習を残す田舎町,静岡県中部の比良賀町を訪れる.その祭りの夜,裕司は天津人の少女,妃沙子に出会う.
ひとの願いを叶える力を持つがゆえに,力を奪われ縛られてきた天津人の少女の伝説.「羽焚き祭」の真実,願いを叶え続けてきた代償…….外箱曰く「講談社BOX史上最恐伝奇ホラー」というものの,それほど怖がらせる意図はなさそう.トラディショナルな舞台設定を,現代風に良い意味ですっきりまとめていると思う.適度におさえたグロ描写しかり,いくつかの悲劇を経ながらもほのかな希望を見せるラストしかり.逆に言うとあっさりしていて少し食い足りないところもあるかなと.キャラクターがちと弱いのは特に気になるところ.バランスの取れた良いホラーだと思うけど,評価は分かれるかもな,という気がしました.