小林三六九 『キリサキシンドロームII -イツハリアムネジア-』 (電撃文庫)

「しかたあるまい。それがきみの選んだ道なのだから」
黙ってパフェを食べていた不知火が、不意に冷たい言葉を浴びせた。
「誰かになりたいと思っているうちは、何者にもなれやしないさ」
千尋は「そうだね」と呟き、弱々しく笑う。

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キリサキシンドロームに冒されたイタチ娘・三日月と遥彦の出会いから一ヶ月が経った.球技大会で沸く学校に,蟲のアヤカシが湧き始める.なんとか片付けたものの,根本的な原因が分からない.事件を追う遥彦たちの前に,“他人に変身する”力を持った多智花千尋が現れる.
カッターナイフをキチキチいわすカマイタチ娘がヒロインの学園異能第二巻.今回の物語のキーは,誰にでもそっくりに変身できる能力と,ちょっとした記憶がランダムに消えるという代償.といってもミステリ的な仕掛けは薄味で,引用部のようなアイデンティティに関わる部分が大きいのだけど.イタチ娘に犬娘猫娘ヤンデレ蜘蛛娘にと,各種取りそろえつつ,どの女の子も良い意味で落ち着いていて,物語的にも同様,良い意味で落ち着いている.強くすすめるものでもないけど良かったです.