ドナート・カッリージ/清水由貴子訳 『六人目の少女』 (ハヤカワ・ミステリ)

六人目の少女 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

六人目の少女 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

「遺体を調べているあいだ、なぜこんなふうに少しだけ水に浸かっているのかを考えていたんです……」
「ここは洗濯場だ」ボリスが言った。わかりきったことだと言わんばかりの口調だ。
「ええ、ですがこの建物は電気と同じく、水まわりの設備も長らく機能していません」
誰もが不意をつかれた。とりわけゴランは愕然とした。
「では、この水はいったい――?」
「驚かないでください……です」

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森のなかで少女の六本の左腕が見つかった.捜査の結果,いま世間を騒がせている連続少女失踪事件の被害者のものだと判明する.しかし,行方不明となっている少女は5人.6人目の少女はいったい誰なのか.
「六人目の少女」と殺人鬼を追う捜査チームを嘲笑うかのように,誘拐された少女の死体が次々と現れる.イタリア出身作家のデビュー作となるサイコサスペンス.シーンごとに派手な見せ場で魅せてくれる一方,全体的なまとまりはあまりない.いろんなものを詰め込んでいるのだけど,芯になるものがどれだかわからない,って言うのかな.ドラマや映画なら素直に楽しめたかもしれないんだけど,一冊の本にされるとつらい.中盤を越えても収束の気配を見せず,発散してゆくストーリーをどうまとめるのかと思ったら,えー……とテンションをくじかれる箇所が一ヶ所ならずいくつもあってなあ.