冲方丁 『マルドゥック・アノニマス3』 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・アノニマス3 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・アノニマス3 (ハヤカワ文庫JA)

ただ見ていることに、とても耐えられなくなってしまった。

何かをしなければならなかった。そしてそれは正しい行いでなければならなかった。

あらゆる計画がそうした思いをもとに立てられたはずだった。なのに何もかも失ったあとで、心の底から願った正しさが自分の中のどこにも見つからないなんて――こんなにも苦しいことがほかにあるだろうか?

ハンターは共感(シンパシー)によって〈クインテット〉の勢力を拡大し,マルドゥック(シティ)の中枢へと食い込んでいく.一方,ドクター・イースターたちは,〈クインテット〉に対抗する“善の勢力”を結集させる.それをウフコックは見ていることしかできなかった.

いよいよシリーズ冒頭へとつながる第三巻.悪と善の全面対決が始まった.二大勢力が暗躍し,裏切り,正面からぶつかり合う.これを冲方丁がガリガリと書いているのが面白くないわけがない.「悪への共感(シンパシー)」のかっこよさと,「善行の孤独」を成し遂げるつらさに身を裂かれそうになる.わずかに見える希望にすがりつかざるを得ない.