周藤蓮 『賭博師は祈らない⑤』 (電撃文庫)

賭博師は祈らない(5) (電撃文庫)

賭博師は祈らない(5) (電撃文庫)

『喉を焼かれたくなかったです。痛かったです』

「だろうな」

『この国で、ひとりぼっちで、辛かったです』

「ああ」

かさぶたを剥がすような言葉。リーラの表情は変わらないのに、その目尻からつうと涙が一筋流れ落ちた。

『もの扱いされて、嫌でした。嫌です』

過去として書かれた言葉は、現在のものとして訂正されていた。

「いつか、また」.街を去った友人との約束を守るため,ラザルスはルロイ・フィールディング率いるボウ・ストリート・ランナーズと協力し,ワイルド商会と全面対立することを決意する.ワイルド商会を率いるジョナサン・ワイルド・ジュニアは,より大きな権力を手にすることで街の『整理整頓』と祖父の名誉回復をもくろんでいた.

予告されていたシリーズ最終巻.ボウ・ストリート・ランナーズとワイルド商会による勢力争いの結末と,賭博師の青年と奴隷の少女がそれぞれに選んだ道を描く.押し合いへし合いするそれぞれの勢力の思惑といい,見せ場であるギャンブルの場面といい,狂気と熱と緊張感がこの一冊に満遍なく込められている.「整理整頓」をはじめとした英国の社会制度の変化,奴隷貿易の廃止という背景に「狂気と紙一重の信頼」を織り込んだ,緻密な描写が本当に良い.読めば読むだけ惹きつけられた.一貫した愛と情熱を感じる力作だと思います.素晴らしい大団円でした.



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