周藤蓮 『賭博師は祈らない②』 (電撃文庫)

賭博師は祈らない(2) (電撃文庫)

賭博師は祈らない(2) (電撃文庫)

まるで初めて恋をした少年のようだ、と自嘲する。二十も半ばになった男が、口説き文句でもない言葉で、これほど照れることもあるまいに。日頃から多くのことをどうでもいいと切り捨ててばかりきて、心の一部はすっかり衰え切っていた。

それでもはっきりと、これだけは声にする。大抵のことを誤魔化してきた自分の言葉が、真実であるように聞こえれば良いと願いながら。

「お前のことを、どうでもいいとはいわない」

言葉にするとその事実はすとんと胸に落ちた。

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リーラを救うため,賭博師“ペニー”ラザルスがブラック・チョコレート・ハウスで大暴れして一週間が経った.名前が知られ,ロンドンの賭場に通えなくなってしまったラザルスは,ほとぼりを冷ますためしばらくバースに滞在することにする.その途中,強盗に遭ったふたりは,ノーマンズランドという村に立ち寄ることになる.

18世紀末のイギリス.勝たない賭博師ラザルスと言葉を話せない褐色の奴隷少女リーラの物語第二巻.一巻(感想)からさらに良くなっていると思う.リーラが置かれた「異国生まれの奴隷」という存在の意味を軽く扱わず,かといって変に重い話にするでもなく,きちんと消化した上で読みやすいエンターテイメントに仕立てている.作者のバランス感覚のなせる技だと思う.ギャンブルの場面のテンポと緊張感も良いし,隙あらば挟み込まれるイギリスのうんちくも一巻同様で楽しい(今回はほとんどわからなかったけど).良いものでした.この二冊で,本当に好きなシリーズになりました.